大学病院(医大病院)で働く看護師が辞めたい5つの理由とその解決法
[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師).more..]
photo:https://www.flickr.com/photos/ncindc/2880746957/
大学病院は仕事へのモチベーションが高い看護師が多い傾向があります。
でも、もちろん「毎日が辛くて辛くて辞めたい」と思っている看護師もたくさんいます。
同僚の看護師はみんな仕事が好きでやりがいを感じているから、なかなか辞めたい気持ちを吐き出せない、相談できないことに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
大学病院を辞めたいと思うのは、珍しいことではありません。
大学病院では毎年新卒看護師を大量に採用していますよね。
裏を返せば、毎年大量の看護師が退職している証拠なのです。
だから、みんな辞めたい気持ちを隠しているだけで、辞めたいと思いながら大学病院で働いている看護師はたくさんいます。
大学病院の看護師が辞めたい理由には、主に次の5つがあります。
- 看護技術が身につかない
- 激務で残業が多い
- 精神的に追い込まれる
- 育児と仕事の両立に理解が得られず肩身が狭い
- 勉強会が多くてうんざり
大学病院を辞めたい看護師は
- 大学病院のメリットはそのままに
- 辞めたい理由を軽減できるところ
に転職しましょう。
大学病院のメリットはそのままに、辞めたい理由を軽減できるのは「民間の総合病院」です。
また、辞めたい理由を「完全に」解決するためには、次の職場への転職をおすすめします。
現状 | おすすめ転職先 |
とにかく看護技術を身につけたい | 中規模病院 or 訪問看護 |
激務から解放されたい | 介護施設 or デイサービス |
精神的にゆとりを持って働きたい | 軽症な人や健康な人を対象にした職場 |
育児と仕事を両立させたい | 子持ち看護師が多い職場 |
勉強会が嫌い | 個人病院 or クリニック |
大学病院に無理にしがみつく必要はありません。
大学病院以外にも、良い職場はたくさんあります。
大学病院からの転職を考えている人は、「大学病院の看護師」というプライドは捨てるようにすると、転職に成功しやすくなります。
1.大学病院(医大病院)で働く看護師が辞めたい5つの理由
大学病院で働く看護師は、主に次の5つの理由で辞めたいと思うようになります。
- 看護技術が身につかない
- 激務で残業が多い
- 精神的に追い込まれる
- 育児と仕事の両立に理解が得られず肩身が狭い
- 勉強会が多くてうんざり
大学病院の看護師は、最先端の高度な医療を行っており、やりがいを感じながら働いている人も多いですが、これらの理由で辞めたいと悩んでいる人もいます。
1−1.看護技術が身につかない
photo:http://www.psu.edu/
大学病院で働いていると、採血や静脈注射、マーゲンチューブの挿入・交換などを行いません。
だから、大学病院以外の看護師なら出来て当然の看護技術を、大学病院で働いていると、身につけることができません。
一般的な病院やクリニックでは、採血や静脈注射、マーゲンチューブの挿入・交換などは看護師の仕事になります。
でも、大学病院には研修医がたくさんいて、それらは研修医の仕事になりますので、看護師は行わないことが多いのです。
看護学校時代の友人と会った時に、
「採血が得意」
「血管が細い患者さんのルートを一発で取れた!」
などの話を聞くと、焦りを覚えることがあります。
「私は看護師なのに、採血をやったことがない。看護師としてこのままで良いのだろうか?」と悩み、辞めたい気持ちが出てくるのです。
1-2. 激務で残業が多い
大学病院は激務です。
勤務時間中は休憩を取れないほど忙しく、さらに病棟では毎日残業するのが当たり前というところも多いです。
激務が続くと、仕事中心の生活になってしまいます。
大学病院は主に急性期を扱っています。
また、一般的な病院に比べると、重症患者さんも多く、さらに緊急入院も珍しいことではありません。
そういう事情で、大学病院は激務で残業が多いのです。
激務で残業が多いと、プライベートの時間を削ることになりますし、勤務後の予定が立てられません。
仕事で疲れてしまって、病院から直帰して家で寝るだけ、休日も疲労回復のために寝るだけ、の生活になりますので、仕事中心の生活に嫌気がさして辞めたいと考えるようになります。
1−3.精神的に追い込まれる
大学病院は重症な患者が多く、常に緊張感を持って働かなくてはいけませんし、スキルアップへのプレッシャーが強いので、精神的に追い込まれる看護師が多いです。
精神的に追い込まれると、「こんなに精神的に消耗してまで働く必要があるのか?」と疑問を感じてしまいます。
大学病院では重症な患者が多いので、勤務中はいつも緊張を強いられます。
「1つのミスが患者さんの死に直結する」と思うと、プレッシャーを感じてしまいます。
また、インシデントに対しても非常に厳しく、一般病院ではインシデントには含まれないことでも、大学病院ではインシデントになります。
インシデントを起こせば、インシデントレポートを書いて師長に報告しなければいけません。
当然、師長や先輩看護師からは、小言や嫌味を言われます。
さらに、スキルアップへのプレッシャーも大学病院では非常に強いです。
休みの日を使って強制的に院外研修に参加するように言われることも多く、ゆったりマイペースに働くことが許されません。
大学病院では精神的に追い込まれることが多く、精神的な余裕がなくなってしまうのです。
1−4.育児と仕事の両立に理解が得られず肩身が狭い
大学病院は若い独身の看護師が多いため、「育児と仕事の両立の大変さ」を理解してもらえないことが多いです。
そのため、産休・育休から復帰したら、肩身が狭い思いをすることになり、大学病院を辞めたいと思う人も多くなります。
大学病院は新卒看護師として入職する人が多いため、20代の若手看護師が半分以上を占めています。
そして、独身の人が多いので、既婚者、特に子持ちの看護師は少数派です。
看護師の仕事と育児を両立させるのはもともと大変ですが、大学病院は激務で残業が多いので、なおさら大変なのです。
子持ちの看護師は保育園のお迎え時間に間に合わないからと、残業中に早めに上がらせてもらうことがあります。
また、子どもが熱を出せば、すぐに保育園にお迎えに行かなくては行けませんし、翌日は看病のために欠勤することもあります。
育児経験がある看護師なら、このようなことも「子どもが小さいから仕方がないこと」と理解してくれます。
しかし、育児経験がない若手看護師から見ると、「子どもを言い訳にして楽をしている」、「甘えている」と思われかねないのです。
大学病院は子持ちの看護師に対して理解がある職場とは言えないところが多く、産休・育休から復帰した看護師は、職場で居心地が悪くなり、辞めたい気持ちが湧いてくることが多いのです。
1−5.研修や勉強会が多くてうんざり
大学病院は研修や勉強会が多いです。
研修や勉強会は基本的に日勤後に行われますが、日勤の勤務者だけではなく、夜勤明けや休日の人も半強制的に参加を強いられるので、プライベートの時間が少なくなります。
大学病院は最先端の医療を行っているため、院内研修や部署内での勉強会が頻繁に行われます。
もし、研修や勉強会の日にあなたが日勤だったらまだ良いのですが、夜勤明けや休日でも研修や勉強会の時間に合わせて病院に行って参加しなければいけません。
しかも、時間外手当はつかないことが多いのです。
研修や勉強会が重要なものとわかっていても、強制参加で貴重な時間を潰されて、しかも手当がつかなければ、もう辞めたいと思うようになるのも仕方がないことです。
2.大学病院(医大病院)を辞めたい看護師は2つのメリットを見直そう
「大学病院を辞めたい」と考えている看護師は、大学病院のメリットを見直しましょう。
大学病院のメリットを何も考えずに、ただ辞めたい気持ちのままに辞めてしまうと、あとから後悔することになりかねません。
大学病院のメリットは、次の2つがあります。
- 給料が高い
- 最先端の医療を行っているので、スキルアップできる
この2つのメリットがあるから、あなたは大学病院で働こうと思い、大学病院に入職したのではないでしょうか?
給料が高い
大学病院はほかの病院に比べると、給料が高いです。
日本看護協会の「2013年 病院における看護職員需給状況調査」によると、設置主体別の賃金では、私立学校法人(=私立大学病院)がもっとも高くなっています。
日本看護協会の「2013年 病院における看護職員需給状況調査」図表2-2 設置主体別の給与額 (税込給与総額)
国立大学病院も私立大学病院ほどではありませんが、ほかの一般的な病院に比べると給料が高めです。
最先端の医療を行っているので、スキルアップできる
さらに、大学病院は高度な医療を行っていて、様々な症例を看る事ができますし、教育制度が整っているので、看護師としてスキルアップするには最高の職場です。
大学病院を辞めたい人は、この大学病院のメリットをきちんと確認して、退職するとこの2つのメリットを失うと言うことをよく理解しておく必要があります。
そして、それでも辞めたいという気持ちが変わらなければ、転職を具体的に考えていくと良いでしょう。
3.大学病院(医大病院)を辞めたい看護師におすすめの転職先
プランA
大学病院を辞めたいと思っている看護師には、基本的な大学病院のメリットはキープしつつも、デメリットが少なくなる「総合病院」に転職することをおすすめします。
プランB
でも、総合病院では「辞めたい悩み」を完全に解決することが難しいことがあるので、悩み別に、悩みを完全に解決できる転職先も候補に入れておくと良いでしょう。
現状 | おすすめ転職先 |
とにかく看護技術を身につけたい | 中規模病院 or 訪問看護 |
激務から解放されたい | 介護施設 or デイサービス |
精神的にゆとりを持って働きたい | 軽症な人や健康な人を対象にした職場 |
育児と仕事を両立させたい | 子持ち看護師が多い職場 |
勉強会が嫌い | 個人病院 or クリニック |
これらの転職先から、あなたの希望条件に合うところを探せば、大学病院を辞めて良かったと心から思えるようになるはずです。
3−1.【プランA】 メリットはそのまま、デメリットが少ない総合病院へ
大学病院を辞めたい人は、総合病院への転職を考えてみましょう。
総合病院は大学病院のメリットを維持しつつ、デメリットを軽減することができる職場です。
規模が大きな総合病院は給料が高めですし、大学病院と同様に、最先端の医療を提供していて、教育体制が充実しているので、スキルアップしていくことができます。
また、大学病院よりは子育てと仕事の両立に理解があることが多く、勉強会の頻度も少なめです。
スキルアップへのプレッシャーも大学病院よりは軽めでしょう。
残業時間は病院によって異なるので、平均残業時間を調べて、残業時間が少ない職場を選ぶようにしてください。
ただ、総合病院は大学病院と近い性質を持つ病院ですので、大学病院を辞めたい理由をすべて完全に解決できるわけではありません。ただ「軽減できる」だけです。
3-2. 【プランB】 悩みを完全に解決出来る職場へ転職
3-2-1. 看護技術を身につけたいなら、中規模病院や訪問看護へ
photo:https://www.flickr.com/photos/dave_mcmt/4103782640/
中規模病院
もし、あなたが「とにかく看護技術を身につけたい」、「看護技術を磨きたい」と思っているなら、200〜300床前後の中規模病院へ転職すると良いでしょう。
中規模病院には研修医がいない、もしくは少ないので、研修医ではなく看護師が中心になって採血や静脈注射などを行います。
また、大病院ほどでなくても、重症患者が多いので、医療行為を頻回に行う機会があります。
看護技術を身につけるにはピッタリの環境です。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションも、看護技術を身につけるためには適した職場です。
と言うのは、1人で患者さんの自宅を訪問するため、採血などに失敗しても代わってくれる人がいないためです。
スパルタ教育のようなものですが、誰も頼れる人がいない環境で頑張れば、自然と高いスキルが身につきます。
3-2-2. 激務から解放されたいなら、介護施設やデイサービスへ
激務から解放されたい人は、介護施設やデイサービスへの転職をおすすめします。
大学病院は激務で残業が多いですので、体力的に限界を迎えている人は、給料とかスキルアップとかどうでも良いから、「とにかく激務から解放されたい!」と思っていますよね。
そのような人は介護施設やデイサービスがおすすめです。
介護施設やデイサービスは、看護師は利用者の健康管理が主な業務になり、病院と比べると業務量は少なめです。
しかも、介護士がいますので、おむつ交換や入浴介助などの介護業務は介護士が中心になって行うので、体力的にも楽です。残業もほとんどありません。
そのため、介護施設やデイサービスに転職すると、激務から解放されて、ほぼ毎日のように定時退勤ができるでしょう。
3-2-3. 精神的にゆとりを持ちたいなら、軽症な人や健康な人が多い職場へ
精神的にゆとりを持って働きたいなら、軽症な人や健康な人が多い職場へ転職しましょう。
具体的には、介護施設やデイサービス、クリニック、健診センターなどです。
大学病院のように重症な患者がいると、どうしても精神的なプレッシャーを感じますし、その他、いろいろと精神的にストレスを感じることが増えます。
でも、軽症な人や健康な人を対象にした職場なら、精神的なプレッシャーを感じることがありません。
また、職場自体も比較的ゆるい雰囲気であることが多いので、精神的に余裕を持って働くことができるのです。
3-2-4. 子育てと両立させたいなら、子持ち看護師の割合が高い職場へ
子育てと両立させたいから、大学病院を辞めたい看護師は、子持ちの看護師の割合が高い職場へ転職しましょう。
子持ちの看護師が多い職場なら、子育てと仕事の両立に理解があるので、肩身が狭い思いをすることがなく、みんなでお互いをフォローしながら働くことができます。
- おすすめは中小規模病院の外来です。
- また、日勤で働ける療養型病棟も良いと思います。
外来や療養型病棟は、比較的子持ち看護師の割合が高めです。
ただ、託児所の有無や子育て支援の充実度などによって、子持ち看護師の割合は変わりますので、実際に調べてからどの求人に応募するかを決めるようにしてください。
3-2-5. 勉強会が多いのが嫌なら個人病院やクリニックへ
研修や勉強会のために、貴重な時間を使うのが嫌だから、大学病院を辞めたい人は、個人病院やクリニックへの転職をおすすめします。
個人病院やクリニックは、教育制度はあまり整っていないので、研修や勉強会は多くありません。
大学病院のような専門的な医療、最先端の医療を行っているわけではないので、積極的に知識を吸収していく必要性が高くないという理由もあります。
また、働いている看護師も、あなたと同じように研修や勉強会のために、自分の時間を使いたくないと思っている人が多いため、積極的に勉強会を開催するような人もほぼいません。
仕事よりもプライベートを重視する人が多いのです。
介護施設も大学病院ほどは研修や勉強会は多くないですが、最近は介護施設も専門性の高い看護・介護サービスを提供しようとするところが増えています。
そのため、老年看護や認知症看護の研修を受けたり、介護士と合同の勉強会を行ったりしなければいけないこともありますので、注意が必要です。
4.大学病院(医大病院)を辞めたい看護師はプライドは捨ててしまおう!
大学病院を辞めたい看護師は、「大学病院に勤めている看護師」というプライドは捨ててしまいましょう。
大学病院の外に一歩出てみると、そんなプライドは必要なかったことを実感するはずです。
大学病院を辞めたいと思っていても、なかなか退職への一歩を踏み出せない人、辞めるタイミングがつかめない人は、「大学病院で勤務している看護師」というプライドが邪魔しているのではないですか?
大学病院は高度で最先端の医療を提供している病院ですから、大学病院で働いていると、看護学校時代の友人や家族、親戚からは
「大学病院で働いているなんてすごいわね!」
と言われることがあると思います。
また、あなた自身も「私は高度な医療の中で働いている」という自負を少なからず持っているのではないでしょうか?
大学病院は医療界のブランドのようなものですので、「大学病院で働いている」というプライドを持つのは当然のことです。
でも、大学病院以外で働いてみると、大学病院なんて別に大したことなかったと思えることがたくさんあるのです。
また、大学病院の看護師としてのプライドを持ったまま転職すると、新しい職場に慣れる妨げになることがあります。
プライドがあるために、素直に「わかりません」と言えなかったり、「わざわざ指導してもらう必要なんてない」と意地を張ってしまうことがあります。
転職先によっては、大学病院では考えらないような「一昔前の医療機器」を使っているなどのギャップを感じることがあります。
大学病院の看護師というプライドがあると、
「こんな時代遅れの職場、ありえない!」
と受け入れられないこともあるでしょう。
そうすると、転職先の仕事をなかなか覚えられませんし、転職先の人もあなたと親しくするのを敬遠しますので、職場で浮いた存在になります。
そして、転職したことを後悔する羽目になるのです。
そうならないためにも、大学病院の看護師のプライドはサッサと捨ててしまうことをおすすめします。
そうすれば、素直に指導をお願いできますし、大学病院との違いを受け入れられるようになり、新しい職場に早く馴染めるようになります。
プライドは捨てても、あなたが大学病院で培った経験、身につけたスキル、学んだ知識は変わりません。
そして、余計なプライドは捨てた方が、新しい職場で経験・スキル・知識を活かしていくことができるはずです。
まとめ
大学病院を辞めたいなら
- 大学病院のメリットを保ちつつ、辞めたい理由を軽減できる職場か
- 辞めたい理由を完全に解決できる職場
へ転職しましょう。
転職する時には余計なプライドは捨てて、心機一転頑張るようにしてください。
大学病院からの転職を考えているなら、転職支援サイトを利用すると、かんたんに、あなたの希望に合った転職先を見つけることができますよ。
完全無料で利用できますので、利用価値は大きいと思います。
転職を後悔しないためにも、利用できるものはどんどん利用して、良い転職をしましょう。
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